2077年におけるナイトシティの地平線の輪郭は、そびえたつ高層ビル群によってなぞられる。ビルはそれぞれが小さな街であるかのような構造を備え、ナイトシティの縮図として機能している。衣食住から始まり、武器調達やトレーニングまでありとあらゆるものを提供する、自己完結型の巨大生命体とでも言ったところだろうか。だがそれを近未来におけるユートピアの実現であると結論付けるのはまだ早い。これらの高層ビル群は、ナイトシティの路上と同じくらい危険で、モラルの欠如した場所なのだから。
この街はまさに、消費主義の繁栄を表す最たる例であると言える。街中ではどこを見ても、様々な商品や理想の生活を語る広告が目に入る。地下鉄に乗っていようと、歯を磨いていようと、路地裏で立小便をしていようとも、常に光り輝く色とりどりの広告に取り巻かれるのだ。このような広告は、もはや感覚的経験の一部として住民たちの生活に浸透している。企業は叶うことのない夢を売り続け、大衆はまんまとその手の上で踊らされてしまうのだ。